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ユーザー検証


和歌山双信
ほぼ全てのカメラメーカーと取引き

 レンズ交換式一眼レフ式を中心に、近年、デジタルカメラの市場が拡大している。量産が進む中、部品の樹脂化・軽量化も進んできた。そんな中、ニコン・キャノン・コニカミノルタ・ソニー・パナソニック等、カメラ・レンズ関連のメーカーほぼ全てと取引を持っているプラスチック金型メーカーがある。今年で創立20周年を迎える、東大阪の双信がそれ。グループ会社の和歌山双信を訪ね、伊藤起吉常務に、カメラ向けの精密金型づくりの現状を聞いた。
 

 双信精機として創業したのは昭和55年。その後、昭和63年に双信となった。数年後に旧ミノルタと取引を始めた事から、カメラ関連の金型が増え、今や売上げの約8割を占めている。継ぎ目がない鏡筒金型が評判を呼び、取引企業先には、ほぼ全てのカメラメーカーの名が並ぶ。
 大手カメラメーカーが内製率を上げてくる中で、大手では作れない品質レベルの保持が必要になる。
 同社が得意とする鏡筒金型は、高い加工精度が要求される分野で、機械以外にも加工上の工夫が凝らされる。例えば、素材。カメラ鏡筒の内径加工に用いるスライド式金型は、角材ではなく丸棒材から削りだしている。「金属にも圧延方向があり、それは、角材では判らない。圧延の切り方によって眼に見えない反りが発生するので、圧延方向がわかる丸棒材を使っている」。
 また、素材に焼き入れの際に生じる割れやヒズミの存在を無くすように、2台の炉も設備するなど、この数年、毎年数億円規模で設備投資を進めてきた。昨年度は約2億円。社員数約100名、売上げが約20億円規模の企業としてはかなりの額になる。
 これら苦労の結果、同社製金型を用いたプラスチック鏡筒には、成形時に生じるはずの継ぎ目がない。レンズの精度に直結するため、カメラメーカーでこの技術を欲しないところは無い。
 これら設備は人材育成面でも活用している。長島精工の研削盤と出合ったことが、その始まりだ。「1μ削る指示をすれば応えられる機械があれば、測定器で測りながら、その精度レベルを素人が体現できるようになる。そのレベルを肌で知ることで、職人への第1歩となる」。
 精度面を考えると、従来、鏡筒金型は放電加工機でしか加工できなかったものが多かったという。しかし、2002年、碌々産業の『CEGA』に出会ったことで、カメラのカム用金型を直彫り化に切り替えた。「碌々さんの機械は、位置決め精度が優れていた。中でも、Z軸方向がよく決まる。今では、カメラの鏡筒のカム加工にはなくてはならない」。
 今年に入って、同社ではCEGA1台(通算3号機目)を和歌山に増設した。同機選定のポイントは、鏡筒型の増産だけでなく、カメラ関係以外の精密金型部品の加工も狙い、高精度・高回転主軸で、そこそこの切削パワーを持つ汎用性のある機械が欲しかったからだという。「昨年の展示会を見に行き、使用工具径φ1mm〜φ10mmクラスを余裕をもって切削できる機械を探していたが、現場の作業者から『増やすなら碌々機が欲しい』と直訴を受けた。『ダイヤモンド工具で、シリコンウエハーに溝を入れる』ような特殊加工もCEGAでトライしている。このクラスの機械になれば、使い方しだいで大概のことは出来ると思う」。
 碌々産業製機への評価は精度だけでなく、耐久性に関しても高く評価する。「この5年、双信本社(東大阪市)で使ってきたが、故障がほとんどなかった。日々のメンテナンスにしても、油の手入れ位ですむ」。
 エンドユーザーがコストに厳しい業界である金型製造業界において、これら精密金型の分野では、その考え方が改まってきているのを感じるという。
 カメラ向け金型には2つにニーズがある。年に3?4回モデルチェンジする「コンパクトカメラ」には短納期で複数の金型を必要とされ、ヒット商品になれば一型あたり100万ショットの耐久性のある金型が必要なる。短納期と、高品質。『壊れない』・『再現性の良い』金型へのニーズだ。「安くて早い金型を求め続けたカメラメーカーは、後にトラブルに苦しんだ結果、製品のコストがあがってしまう。品質の高い金型は、逆に製品コストを下げる事に気付いたのだと思う。金型を使う量産工場が重宝する品質の製品には、評価を頂けるようになった」。
 実際、同社の売上げは、昨年度で約25%伸びた。カメラ業界が好況にある中とはいえ、不況が伝えられる金型業界では異例といえる伸びを示している。
 近年の一眼レフの鏡筒部品も同社で8割方作られている。「最近、ユーザーの高級機志向が高まってきた。今後はカメラのボディ部の金型作りにも挑戦していきたい。また、金型作りだけでなく、精密プレスの分野にも参入していきたい」。

76号(20.4.1)



米山金型製作所

 「精度」を謳い文句に、100トンクラスまでのプラスチック射出成型金型の設計、製作まで手がける米山金型製作所の強みは、豊富な最新設備とそれを扱うオペレーターの能力の高さにあると言ってもいい。自動車の部品を中心に、ビデオカメラなどのОA機器部品、通信機器の各金型関連を手がけているが、特定の会社を通じた仕事確保だそうで、リピート率が高くなければ無理な形態でもあろう。設計変更への対応やメンテナンスの面でも高い顧客満足度を与えている、そんな実績を裏打ちさせる。
 「1ヶ月で平均して15型から20型をこなしている」型設計では、その工程はすべて3D化、効率アップと信頼性確保をこの段階から追求している。現場に20余人いる製造スタッフは、1台の機械に最低でも2人は操作が可能で、加工設備は、マシニングセンタでは牧野フライス製作所製4台、森精機製作所製2台、放電・ワイヤは三菱電機製8台、平面研削盤はナガセインテグレックス・・・ここに列挙しただけでもその豊富さは伺い知れよう。もちろん、これ以外にもモールド溶接機、3次元測定機、最新のCAD/CAMなどを揃えるが、これら設備群に今年から「微小・微細」を標榜する碌々産業のMEGA?が新たな戦力に加わった。
 「碌々産業製の導入はZ軸の精度は特に優れていると聞いていたからだが、結果的にはトータルな加工時間短縮にも貢献してくれている」
 この半年間の稼働状況を検証しつつ、冒頭、米山郁子社長は精度にプラスしたスピード対応でのメリットを指摘してくれた。
 7年くらい前からマシニングセンタに外段取りシステムを導入して納期短縮に取り組んでいる。機外で測定し、パレットチェンジャーに入れ、10ミクロンの精度は確保した。
 「しかし、マシニングセンタで夜間に加工した製品を翌朝、精度をチェックすると10ミクロンから20ミクロンくらいの誤差が出ている。金型組み込み時に削り直しが必要となり、時間ロスにも繋がっている」と言う。
 現場を指揮する島岡伸幸工場長は「これも従来のマシニングセンタではZ軸でバラツキが出ていたため。MEGAVでは、3ミクロン以内の精度が出ているため、削り直しが不要となり、トータルで見るとこの現場での削り直しは従来の半分以下になった」
 Zの追い込み修正がほとんどないことから時間はもちろん、品質の安定にも寄与している。
 「碌々製の直接の恩恵を簡単に纏めると、これまで人の手を介して行なっていたRの合わせを機械で行なえるようになり、省力化が進んだこと、放電加工の時間が短縮できたこと、磨き時間を縮められたことの3点にまとめることができる」(島岡工場長)。
 顧客からの要望は「精度はキープしつつも納期短縮を図ること」-2、3年前なら1・5ヶ月あった納期が3週間以内のものも出てきている。
 「MEGAVとシステム3Rのワークパートナーとの組み合わせは、当社が第1号だが、納期に応えていくためにも、さらに設備を有効に使う方法を検討していく」
 トルクがもう少しあればもう最高、とはMEGAVに付いた注文だが、筆者には暗に「CEGA」導入への比喩にも聞こえた。 (写真:MEGAVは抜群のZ軸精度を誇る)

【取材メモ】

 碌々製を導入するに際して、米山金型製作所はデジカメのスライドスイッチ意匠部を、4社に対しテストカット依頼を行なった。ところが、この時、一番悪い結果が出たのが碌々製だった。碌々産業のスタッフから『工具長を調整してもう一度、トライさせてほしい』との要望を受け、再度やってみると、今度は最高の結果を得ることになったという。
 「『当社のセッティングがまずかった』との説明を受け、ミクロンの精度を追う碌々ならではの分析結果に、今思えば納得がいく」と島岡工場長は振り返った。雨が降ってかえって地が固まった、そんな出会いが印象的な現場だった。