HOME>森精機製作所ユーザー取材>



長曽鉄工所

 森精機製品、続々と導入中

 伊予の国、愛媛県西条市。西日本最高峰の石鎚山を含む石鎚連山に端を発する地下水脈が、市内各地で「うちぬき」と呼ばれる自噴水として湧き上がる水の都である。これら良質で豊富な水源を工業用水として、同市は現在、新たに工業用地を作り企業誘致も進めている。
 既存の工業地域のひとつ、西条鉄工団地の中に本社工場を構える企業に長曽(ちょうそ)鉄工所がある。NC旋盤・自動盤・複合機を合わせて約75台、マシニングセンタ約10台、各種研削・研磨機約15台、その他ボール盤等各種工作機械を含めて200台余を設備し、油圧機械部品等の丸モノ加工を中心に行っている。従業員は経営陣、パートタイマーを含め98名。
 同社は、名古屋で旋盤工として働いていた長曽哲夫社長が、昭和43年に郷里の愛媛県西条市で独立創業した。「創業当時は(同市内の)丹原にて長曽社長1人でやっていた。井関農機などへの農業機械部品の加工が中心。その後、織機部品、印刷機械部品、ツーリング関連等の工作機械部品、油圧機械部品と事業が拡大していき、そのつど、設備、社員を増やしてきた。平成14年に現在の西条鉄工団地内に移り、現在は建機に組み込まれる油圧機械部品が6割を占めている」(取締役、加藤弘之営業部長)。
 中国のインフラ整備向け需要を背景に非常に好調だと言われる建機業界だが、同社もここ数年、非常に忙しいと言う。「建機部品のポンプは現在、月に1万8000台が市場に送り出されている。油圧ショベル・クレーン等全てを含めての数だが、これはちょっと考えられない数字。中国だけでなく、アメリカの住宅建設に向けた建機需要も根強い」。
 旋盤が設備の中心である同社が強みを持つのは丸モノの内径加工。可能な限り、削り出しでミクロン台まで削り込み、仕上げていく。長尺ワークの内径加工など、加工屋が難しくて避けたがる加工にあえて挑戦し続けている。
 旋盤工からのたたき上げである長曽社長。自らが持つ技術の継承を進めるために、社員教育の一環として「自分の使う刃具の再研磨は自分で行う」ことを全社員に課している。技術を高いレベルで平準化させることが狙いだ。また、国家検定制度で定められる技能検定の取得も支援する。作業者に自分の仕事への自信と誇りを持たせることで、各人の仕事の幅を広げさせる素地作りも怠らない。
 このような取り組みの結果、同社の技術力は非常に高いレベルで安定しているという。顧客から設計図で示される公差が±5ミクロン以内の指示であっても、同社内での指標は常に±2?3ミクロンの内に収めること。社内の精度を安定化させるために、使う加工用のジグ・品証用のゲージ等は90%自社製だ。「製品の面粗さはもちろん、面品位の点でも追求している。そういった点は、機械による技術ではなく、各人の技能によるところが大きい。バイトによる研削の方法を微妙に変えるだけで仕上がり面の見た目は変化するが、各作業者が自分の工具を研磨して対応するしかなく、そのような技術は、実際に切りくずを出し続けて初めて備わるもので一朝一夕には育たない。当社では刃具の再研磨が出来るようになることから始めさせているが、そこから進めていけば被削材に応じた工具研磨が出来るようになる。社長が持つ、目に見えない技能も受け継いでいけると考えている」(生産技術リーダー・中川康司課長)。
 同社では昨年5月に森精機製作所の『NL2000Y』を導入した。同社の設備更新は早いという。高精度な加工を維持するには設備の能力が重要な要素だと考えているからだ。また、今後しばらくは設備規模を拡げず、生産効率向上を目指し、旧来機からの更新を進めていくという。
 『NL2000Y』導入の決め手となったのも、複合旋盤であることだという。「内径・外径切削時に穴あけ加工、キー溝、斜め穴、フライス加工も同時加工したい」との狙いから、複合の旋盤加工機を探し工程集約を図った。「マシニングセンタと旋盤とに加工工程を分けていると、精度面、各工程での停滞などで悪影響が出てくる。また、段取り替えも面倒で、工程をまとめたかった。だからミーリング機能付きの機械を探していた」。
 森精機製品への評価は高い。長らく、他社の機械も使用してきたが、今後は森精機製作所の機械が強い選択肢に入ってくると言う。「元々、『SL‐253』を使っていたが、これが当社の加工に上手くはまった。バーフィーダを接続して、今では、1日あたり23時間は稼働している。稼働率は95%以上になる」。
 今年8月には同じく森精機の立形マシニングセンタ『NV5000α1』を導入した。同社内に『NV5000』シリーズが設備されるのは通算で3台目。ワークに合わせて複合機と使い分けをしており、ワンチャックで5面加工を行うために、特注のNCロータリーテーブルを備え付け、加工効率と加工精度の向上を図っている。
 マシニングセンタに関しても森精機製品への評価は高く「加工に掛かる力に対し負けない剛性があり、マシンパワーがあるのでワークに対してビビらないのが良い」と絶賛。今後、順次行われるであろう設備の更新の際にも、他社製品からの置き替えを考えているという。




M−TEC

 08年以降、新規設備導入も予定
 埼玉県朝霞市のM‐TEC。国内ツーリングカーレースの最高峰「スーパーGT選手権」に参戦する本田技研工業(以降、ホンダ)から委託を受け、エンジン部品加工の大部分から組立て、納入までを請け負っている。その後のレース場でのメンテナンスサービスも任されていて、ホンダのレース活動を支えている。
 M‐TECの前身となる、株式会社無限は1973年の創業。(注・下部)ホンダ向けの2輪車・4輪車のチューンナップ用パーツの開発、販売からスタートし、FJ1300向けや初代シビック用のエンジンの開発、モトクロスバイク用の2サイクルエンジンなどの部品加工を請け負う等、発足当初からホンダのレース活動に協力してきた。また、同社自体も「無限」として独自にレースに参戦。数々の素晴しい戦績を残している。ホンダがF1を一時休止していた時期も、「無限ホンダ」として2000年まで、エンジン供給を続け、F‐1へのエンジン供給終了後も、ルマン24時間レース等の耐久レース用エンジンの開発を独自に行っている。
 無限がエンジンサプライヤーとして地位を不動のものとしたのは、F3000やフォーミュラ・ニッポンで活躍した、3・0リッターV型8気筒エンジン「MF308」である。発表された1988年には全日本F3000で8戦5勝の成績を上げ、2005年に部品供給が停止されるまで、絶え間なく改良が加えられた。F3000、フォーミュラ・ニッポンでの通算戦績は172戦161勝。まさにレーシングエンジンの名機である。
 同エンジンは海外でも高く評価され、受注が増え、増産体制が敷かれるようになり、年産50基を目標に機械設備が次々と導入された。同社の生産事業部機械製作課、亀田憲次課長にとっても思い出深いエンジンであるという。「今の工場も、その頃に出来たのですが、『MF308』の新作を50基生産する以外にも既製品のリビルト業があり、ツール200本を持つ横形マシニングセンタを3台、20面のパレットがあるパレットチェンジャーシステムなどが増設されました。結果、90年代にF1に参戦を始めても、十分対応でき、会社自体も、一般の方に名前を知って頂けるようになりました。当社にとって、ターニングポイントだったと思います」。
 同社では、牧野フライス製作所、安田工業、大阪機工など、多数のメーカーの機械を設備してきたが、2002年以降、森精機製作所製機械の設備の導入を始めた。最初の機種は旋盤のSL‐303BMC/1500。旋盤を担当していた同課の原井丈実課長代理が、かつて居た加工現場で、先輩が扱っていた森精機製機械に、憧れの念を持ち続けていたことが導入のきっかけである。「自分が機械を買い与えられる際には、是非、森精機の機械を…」との思いが会社に届いたのだという。
 その当時、同社設備は従来機からの更新期に当たり、旋盤だけでなく複合加工機MT2500も購入した。これは、前述の旋盤機の購入検討の為、森精機の伊賀事業所を訪れた際、同行した亀田課長が以前より持っていた「クランクシャフトを丸棒から削りたい」という希望を叶えられそうな期待を持った為。「紆余曲折あり、使いこなせるようになるまで5年を要しましたが、今は、部品加工を中心に、精度面ではこれで無ければ出せないですね」と言うまでの『必需品』となっている。
 森精機製品への社内での評価も高まり、2005年以降、相次いで4台の森精機製機械を導入した。内訳は旋盤機1台と立形マシニングセンタ2台、横形マシニングセンタ1台。特に横形の「NH6300 DCG(6面パレットプール)」の選択については、『DCG(重心駆動)構造』に対し、亀田課長が『直感的に』よいと感じたからだと言う。「DCGは、他メーカーの機械よりも精度が出しやすい。『BOXinBOX』構造は、他に例が無く、優れていると感じました。使ってみると、何よりも壊れないのが素晴しい。導入直後のもたつきが一切無く、横形の場合、ワーク丈が大きくなれば、上の位置のワークに(テーブルから離れるほど)逃げが発生し、精度が出にくくなるが、それも無く、精度面でも安定しています」。
 「今までに無い」という言葉が好きだと言う亀田課長。機械選定の要素にもおいている。同社に複数のメーカー製の機械が設備してあるのもその為。その一方で、「新機種の開発が次々と進んでいくのは(良いことなのだろうが)、設備する側にとって購入時期に悩みの種にもなります。ついこの前まで存在しなかったオプションが付いていて、さらに価格まで下がっているのを知ると、複雑な思いになります」とも。
 機械弄りが好きで、ホンダが好きで無限に入ったという亀田課長。「自分達はあくまでも部品供給部隊だが、それでも、ホンダさんと一緒にレースに参戦しているつもりで加工に携わっている。当社のスタッフはそういう人間が多く、それが社員のモチベーション維持にも繋がっている」。
 レース用の試作だけでなく、量産エンジン試作から量産向けのパーツ生産と、事業分野の拡大も念頭に入れる同課では、08年後半頃から機械設備の新設が本格化する予定である。
 (注)2004年、M‐TECは、無限からすべての業務を譲り受け、同時に「無限」ブランドも同社が独占的に使用できる契約を結んでいる。
 (注)2004年、M‐TECは、無限からすべての業務を譲り受け、同時に「無限」ブランドも同社が独占的に使用できる契約を結んでいる。



日静機械製作所

 「NT4250DCGはワークの大小に関係なく自由自在の加工が可能」
 静岡県藤枝市に本社を置く日静機械製作所。昭和52年に創業。当初は設計製作も行っていたが、昭和54年からアマダの下請けをはじめ今では、同社の仕事の9割近くがアマダから請けたもの。主に、レーザー加工機、パンチングプレス、ベンダー等の部品加工を担当している。
 平成16年10月には、アマダの富士宮工場への注力を図り、同じ富士宮市に工場を新設した。現在第3期工事が終了しており、今後、設備を順次増やしていくという。
 日静機械製作所は、森精機製作所が開催した「第3回切削加工ドリームコンテスト」に、「富士山と地球」という作品を出品し、銅賞を獲得した。『地球を大切に・富士山を世界遺産に』をテーマに、富士宮工場が一通りの完成をみた(第4期工事がまだ残っている)記念に、取引先などにプレゼントすべく、制作したもの。富士山・地球の形状を衛星写真からデータ化し、NC加工用にプログラムした。加工に用いたのは森精機の複合加工機『NT4250 DCG』。製作には、1つ当たり11時間かかったという。
 現在、富士宮工場の社員数は24名。このうち22名が地元採用。この半年間に大きく増加した。「指導する立場の2名はベテランで技能・技術を持つ者だが、他は素人集団に近い。それでも、この『富士山と地球』のような精巧な製品を造る事が出来るのは『NT4250 DCG』のおかげ。NC機の進歩と共に、しっかりとしたプログラムを作り、NC機を使いこなせる人が扱い方を教えれば、誰でも『ものづくり』が出来るようになった」。
 海野社長はこれまで、日立精機の『ハイセル』シリーズを「日本で1番」高く評価してきた。藤枝市の本社工場には5台設備している。森精機への評価はそれほど高くはなかった。これまでに設備していたのは、タッピングマシン『TV‐30』の1台だけ。マシニングセンタでは、安田工業、牧野フライス、大阪機工等が中心。
 この評価が一変したきっかけが、森精機が日立精機の営業権を獲得したこと。「日立精機が持つ複合加工機の技術と森精機が持つマシニングセンタの技術。どうあわさるのかなと関心を持っていたところに、森精機から『NT4250 DCG』製作の発表があった。見てすぐに『これはすごい』と思った」。
 海野社長が高く評価するポイントは剛性だ。「ベット・コラムの剛性が非常に理にかなっている。剛性は機械の精度の基本として重要視しているが、オクタゴナルラムや重心駆動など、特長1つ1つに剛性があることが見て取れる。長年、機械を見続けていると、スケルトンの状態を見れば機械剛性はある程度把握できるが、これまでの日立精機をはるかに超える剛性だと思う。また、実際に使ってみて、精度のよさに満足している」。
 海野社長は創立以来、機械の24時間稼働を常に目指してきた。生産効率アップの追求が同社を成長させてきたといえるという。同社では、小型ワークを複数取り付けられる特殊な治具を製作し、ワンチャックで一気に加工する手法を用いており、段取り換え時間の削除・短縮と、長時間の無人加工を行っている。旋盤がベースで、ヘッドが240度動く複合加工機である『NT4250 DCG』はこの加工方法にもフィットした。
 海野社長が『NT4250 DCG』を高く評価するのは、この同社独自の使い方にあっているからでもある。「大きいワークから小さいワークまで、自由自在に加工できるのが良い。仕事の幅が広がる。これまで、『ハイセル』では1個ずつ加工してきたワークも、今はワンチャックで6部品加工している。時間で言えば従来の3割カットになる。機械を無人で何時間動かせるかが、機械選定の1つのポイント」。
 現在、『NT4250 DCG』に対しては不満が全くないと言い切る海野社長。「森精機さんには、大型の5面加工機をラインアップしてもらいたいとは思う。しかし、『NT4250 DCG』に関しては、今のところは文句の付けようがない。初期トラブルはあったが、現在は解決している。また、機械が新型である分、メンテナンス・アフターフォローもきっちりしてくれている。これを10年後、20年後にも続けてもらいたい。今後、経年劣化していく中でどのような問題が出てくるかは判らないが、複合加工機に関しては、現段階で森精機がトップだと思っている。今の自分の評価は高すぎると思われるかもしれないが、10年後、間違いなくそうなっている」。
 富士宮工場には、機械設備用のスペースがまだ残っているが、工事・設備など全てが揃った暁には、アマダの部品加工全てを引き受けられる企業にしたいという海野社長。工場内のロボット化を進めることも視野にいれている。設備に関しては、今後「森精機がファーストチョイス」とのことだが、同工場に何台の森精機製マシンが並ぶのか、また、森精機への評価がどのように変わるのか、継続して見守りたい。
(写真:独自開発の治具が一気加工を実現する)

【取材メモ】
 工場内は非常に清潔。ミストコレクタや空気清浄機など環境機器を完備、工場内に独自の切りくず処理システムを組み上げるなど、作業環境の改善を重視している。いわゆる「工場っぽさ」は見あたらない。
 「企業は『人』なり」と海野社長。会社方針に「明るく、働きがい、働くよろこびのある会社づくり」を明記していて、社員のモチベーション維持にも気を配っている。工員の誕生日には、バースデーケーキが振舞われるとか。