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ユーザー検証・ミツトヨ



山本プレス工業(愛知常滑)

 今から10年ほど前に金型の精密部品加工を生業としてスタートした山本プレス工業(愛知県常滑市保示町)。同社の部品をもって組んだ金型は、客先から「刃もちも良く、修整などの手間要らず」と評価が高い。
 「図面どおりに高精度で短納期に提供する」を信条とする同社の山本正好社長は、18歳から金型屋で修行し24年前にプレス金型屋として独立、バブルがはじけたのを機に、山本社長は金型関連の当時の現状、自分自身を見つめ直すため、知識・情報の収集に貪欲になる。その後部品加工にシフトし今に至るわけだが、その部品は全てミクロン台で仕上げられている。
 「高精度なものをつくり、どのように保証するか」
 山本社長のものづくりに対するこだわりを含め、取材した。
「ゼロに近い同一繰返し精度」

 山本社長の信条は前述のとおり「図面どおりに高精度で短納期」。それは独立当初から一貫している。
 同社の近辺エリアの当時を振り返ると、「価格競争」が熾烈だったと言う。
 「買い手側は価格面で購入を判断する。売り手としては安くするため、どうしても品質が低下する」
 「父親が金型を使用する立場の職についていた。その時の苦労を見ているだけに金型づくりに手が抜けない」
 信条と環境が相反する状況のなかで、バブルがはじけた。山本社長の工員で居続けるための試行錯誤が始まる。
 「機械、材料、熱処理、環境、その相互関係など、あらゆることを学んだ。その過程で精密部品加工に目を向け、スタートした」
 平成元年に金型の精密部品加工にシフト、現在では2D、3DのCAD/CAMやファナック製ワイヤーカット3台にミツトヨ製の測定機「Crysta Apex」を設備、山本社長はワイヤー加工を、連れ合いはラップ加工など、測定には専門のスタッフが非常勤で対応している。顧客は大手の自動車関連が占める。
 同社の部品でつくった金型は、どんな材質、板厚であってもその仕上りに狂いはない。
 その金型の評価の一端を聞いた。
 ハイテンション鋼のバルブ部品(公差±8ミクロン)の製造にあたって、ファインブランキングを採用した型で1時間に500個、仕上げに研磨工程を必要とした。対して同社製部品での型では1時間に1500個と言う。1発仕上げが可能で後加工を必要としない。
 そういった型を組みあげるための高精度な部品を山本社長はワイヤーカットでつくりだす。
 「特別なことをしているわけではない」
 秘密を尋ねた筆者へ山本社長はそう答えた。しかしこうも話す。
 「本に書いてあることを正しくやる。とにかく当たり前のことを当たり前にやる」
 たとえば機械の保全、点検、清掃など決められているとおりに完璧におこなうことで、今もなお機械の精度は安定している。妥協せずに継続することの大切さが身に沁みる話し。
 それは測定機の置かれた室内の環境にも同じことが言えた。
 「365日、20度を±1度でキープしている」
 「測定機の使用時、寒いからといって温度を上げることもなければ、長期休暇に電源を落とすこともない。温度変化で測定機に歪みがでれば意味がない」
 以前は測定に関しては外注していた。しかし、品質保証の必要性、ミクロンのものをつくっているのだから、その保証を自らがおこなおうという考えのもと、測定機の導入を決意。性能面では同一繰返し精度の高さを重視し、ハード面には信頼できる機構のものを数社検討、外部の評判も交え、ミツトヨ製の3次元測定機「Crysta Apex」を採用した。
 しかもそのマシンに標準で付いているタッチプローブに追加して、倣いプローブ、非接触の画像プローブを用意するというこだわりよう。寸法、形状などと多岐に渡る測定システムを常備している。
 「外注していたときの他メーカーの測定機では3回計測して3回ともサブミクロンではあったが答えが違った。ミツトヨの測定機は3回測れば3回ともサブミクロン以内で数値がでる。カタログ以上に精度が良い」
 「ミツトヨの測定機のおかげで、当社の商品が高精度だと証明できた」
 と、山本社長のミツトヨに寄せる信頼は厚い。そこで要望を聞いいてみると、「こだわったのは繰返し精度とハード面。操作性やソフト面がよりシンプルになれば」
 と意見を挙げた。
 (取材メモ) 同社は金型用精密部品をメインとしながら、場合により組んだ金型(組付け型)を納入する場合もある。ワイヤーカットや測定以外にも広いネットワークをもつため、山本社長の活動範囲は広い。






成宗製作所(埼玉・坂戸市)

 エンジン、トランスミッションの量産を前提とした試作を手がけ、およそ20年の実績を持つ、ミツトヨのユーザーでもある成宗製作所を訪ねた。
 自動車部品の大手ダイカストメーカーを直の顧客に抱えるが、大手自動車メーカー、ミッションメーカーへの「開発部隊」に完成度の高い試作品を供給する中で、加工のみならず品質保証の観点からもプラスαを提案。その実力の一端は大手ミッションメーカーからトランスミッションの試作指定加工工場に認定されていることにも伺える。
 今回、取材に当たって社長の鈴木嘉雄氏は、試作製品のデータ作成を展開しているタイの子会社(NTET)と電話回線を使って、埼玉の工場とテレビを通じてインタビューするという、筆者にとって初めての、趣向を凝らした形式を用意してくれた。インタビューを通じて非接触測定の積極的な活用に新たな加工の萌芽を見る思いがした。<写真:非接触測定で得られたデータは貴重な加工データとして生かされている>

試作で開発の不十分をフィードバック
 昭和36年、鋳鉄の加工から生業を起し、量産カーメーカーからの信頼をベースに約20年前に試作メーカーの顔を持った。
 「試作でまずい点を客先の開発にフィードバックしていく。試作でやりたい意図を汲み、量産を前提とした設計担当者の脳裏に入り込む」
 というのが鈴木社長の試作製品づくりの基本的な心構えだ。エンジン、ミッションは言うまでもなくクオリティーの高い製品。維持できなければ根幹が問われる。
 「失敗から学ぶ繰り返し。加工用治具の設計についてもその中で学んだ貴重な経験」と言う。マシニングセンタは7台、これに対し、三次元形状測定機が2台ある。
 「出来上がった製品をどのように品質保証するかで、追加の仕事が入ってくるかどうかが決まると考える。顧客から示される図面レスの3Dデータ、その用途開発という観点は、測定データをどのように活用し得るかで決まってくる」
 実際、ある優れたシリンダについて測定データをもとにCADデータをつくり、よりクオリティーの高い製品として復元した実績がある。
 「オーダーは図面レスの3D指示。速く、正確に測定できなければギャランティーとして成り立たないと考え、3年前にミツトヨさんの三次元形状測定機ファルシオ+レーザー非接触測定子メトリスを導入した。それまで非接触に対する認識は希薄だったが『非接触でデジタイジングして形状を掴まえたい』という、面で評価する考え方で、加工方法までも変えていく領域に踏み込んでいくことができた」
 測定の自動化で省人化、時間短縮ができるうえ、測定したすべてのデータが生かされ
『受身の計測ではなく量産への積極的な加工方法の提案』が行えるようになった。導入からわずか半年で客先から「このシステムで品質保証を」という声がひとつになった。
 2年前には加工室とは別に専用の検査室
「メジャリング ラボラトリー」を設置する力の入れようで、同業他社からも品質保証の注文が舞い込む"ギャランティー屋"としての地歩も築いている。
 「メーカーの開発担当者が考えたものを形にするのは我々であり、試作メーカーはある意味でサービス業だが、誇りを持ってやっていきたい」
   取材メモ
 今回、テレビでしか鈴木社長の顔を拝見できなかったが、風貌はブティックのマネージャーといった面持ち。茶髪に、洗練されたスーツもバッチリ決まっており、とても試作メーカーの社長には見えなかった。インタビューをフォローしてくれた大倉泰生産技術部長も「業界では異端」とコメント。ミツトヨに対しては「計測を中心とした周辺のソリューションをサポートしていく体制づくりを充実させて欲しい、それがミツトヨの開発陣にも刺激を与える」とのメッセージを寄せてくれた。






日立金属 安来工場

 「測定で困っておられない現場はない」-ミツトヨの手塚和作社長のこの言葉を引用するまでもなく、生産現場で品質評価が内包する課題に完全な糸口を見出すことは難しい。そのひとつの大きなテーマとして、ミツトヨが測定の完全自動化と高スループットを追求し、表面粗さ、輪郭、真円度などの形状測定をすべてCNC化した形状測定機シリーズを世に問うて1年が経過した。日本のものづくりの活発な動きが大きな追い風にもなり、これまでに予想を超える200台の出荷実績を達成したと言われる。納入ユーザーは何に魅力を感じ、導入を決意したか。そしてその成果はどうか。今回、ICリードフレームやシャドウマスク向けの特殊鋼生産で世界シェアナンバー1を誇る日立金属安来工場の現場を訪ね、導入を決意した担当者の声をまとめてみた。
帯鋼の表裏計測はワンサイクル240秒
 「月並みな言い方だが、一品一様的な特殊鋼メーカーの基本は、顧客の満足を得られるかどうかに尽きる。品質、コスト、デリバリー、そして納期、それらを緊密に結び合わせ、製品に結晶化できなければ、企業活動を存続させつつ、ユーザーの満足を得ることは難しい」
 と品質保証部の坂東直樹総括主任は言う。たとえば、コスト削減を実行しようとすれば、そこにリスク評価も関わってくる。
 現場は安来工場のメインを成す帯鋼工場。自動化対応外部I/O搭載のサーフテスト「EXTREME SV-3000シリーズ」が今年1月末に納入、据え付けられた。
 「導入の背景としては、試験員の合理化と工数削減にあった。とくに、表面粗さの計測では、これまでスイッチを押すだけという単純作業で、夜勤では本当に睡魔との闘いだった、その自動化を図ろうと言うのが直接の理由」
 ロール状に製品化された帯鋼の表裏の面粗さを自動で測定するー設備導入に当たって、坂東総括主任は測定機メーカー3社に声をかけた。
 「ある社は非常に値段が高価だった。また、ある社はできないと言って投げ出した。結局、値段の面でも折り合いを付けてくれたミツトヨさんのCNC形状測定機を購入することにした」
 月末から稼働が開始されたが、稼働するまでは坂東総括主任も人が付かなくていいというイメージが掴めなかったと言う。
 ストッカーにテストピースを入れ、ステージに乗せ回転させながら表裏を計測する。ストッカーは200枚までの帯鋼が装填できるようになっており、ワンサイクルに要する時間は240秒。一日16時間の稼働実績だ。
 「思ったより早いというのが実感。目に見える大きな効果は残業時間の軽減で、一ヶ月20時間が一桁台になった。また精度面では、これまで基準片に対し最大3%の誤差があったが、現状では0.05%。すごい評価ができるようになった」
 帯鋼工場の需要家層は半導体、とりわけリードフレームに関わるユーザーが多い。発注後、一週間以内の納入が基本と言われるなか、精度にプラスしたこのスピードでのアドバンテージは大きい。
 また、帯鋼工場では設備を導入するに際して厳しい安全審査があって、これも導入時に配慮された点だ。
 「周りをすべてアクリルカバーで保護し、稼動中はインターロック機能が働き、手は入れられない。社内安全基準をクリアさせ、結局どこの部署からも安全面でのクレームは出なかった」
 原価低減は各部署の共通のテーマ。品質保証のセクションも「品質にかけるコスト低減を通して『金儲け』を行うセクション」と、坂東総括主任はどちらかと言えば地味な「品証」における積極性をアピールする。
 「3年半もあれば元が取れると思う。ミツトヨさんへの要望としては、計測ソフトが複雑ということになろうか。パラメーターが多く、切り替え画面も多い。習熟したオペレーターでなくとも普通に使えるようになれば何も言うことはない」