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ユーザー検証
日本ニューノズル
JUNGで工程が1/4に

  人が少ない-圧倒的な設備を誇る工場を見せてもらって最初に得た感想だった。
 ユングを初め、スチューダ、ハウザー、カールツァイス、と欧州製の機械・測定器、国産マシニングセンタ、果ては熱処理炉まで、現在同程度(25人規模)の工場ではまずお目にかかれない設備がズラリとならぶ。
 そこに携わるオペレーターは、平均3・5台につき一人。熱処理の工程を見る担当者が最大で7台を管理する。
 ここへ漕ぎ着けたのは、同社の「いいものを作れば安くなる」と言う理論。
 昭和24年、静岡県清水市(現清水区)で現社長望月飛竜氏の祖父が創業。2代目の豊太郎氏は現在企画室長を務める。
 当初は造船のニーズに応え、ディーゼルエンジン周りのノズルやポンプを加工していた。その後、機構が類似した射出成形機のノズル周辺部品事業に進出し、樹脂製品がプレスから射出成形へ移行する時代の波に乗る。
 船舶用製品では、安全対策が厳しい。製造工程の一部を外注していては、その品質管理が難しくなる。この理念の下、素材を仕入れれば、加工はもとより、熱処理、表面処理を経て出荷する部品まで、すべての工程を社内で完了させるよう設備をそろえてきた。
 素材、熱処理、加工前精度にこだわることで品質を上げるとともに、全工程を社内で把握していれば、問題があっても原因の追究がしやすい。つまり、設備もやり方も違う他社まかせにはしないということだ。
 一度不良を出せば、そのフィードバックや周辺の停止時間も入れると、単価の4から5倍のコストがかかる。高度な部品になるほど不良率も上がる。そこで社内にそろえる設備は、「いつも同じ品質が出せるもの」。
 例えば、ユングなら、同社で作っているどの製品でも、公差を2μm以内におさめることが出来るという。
 ある研削盤の国内メーカーでは「最近ウチの機械もユング並みの精度が出せるようになってきた」と言うが、そのコメント自身が、平面研削盤の性能基準はJUNGにあり、そこに追随していると言っている様なもの。
 精度に加え、研削盤に必要な砥石のドレスにおいては、ユング機が数十分で終わるものを国産機は10倍ほどの時間がかかるという。場合によっては、夜退社前にドレッシング設定をして、朝出勤しても終わっていないこともある。欧州製品を模倣してはいるものの、その性能を出せていない。
 信頼できる機械を使うと、品質・歩留まりは上がり、人手を加える必要は減り、全体の加工時間も短くなる。それはそのままコストにつながり「良いものを作ろうと最善を尽くせば自然に安くなる」と言う所以だ。望月氏は、これが理解できるものづくり関係者は日本に少ない、と言う。
 導入に踏み切る前、販売店であるYKT社渡邉隆司社長の強い勧めでユング本社を含め、欧州の現場を見に行った。
 当時、ユングは唯一クシ刃の加工のできる研削盤を誇っていた。しかしワイヤカットなど、やり方を変えれば他にも同様の加工を得る方法はあった。
 それよりも、「回転数を上げること」と、「割り出し装置をつけること」が、今後は必要だとして、その仕様で研削盤を作ることを要求した。砥石を小型にして高速回転することで小は大を兼ね、割り出し装置をつけてクリープフィード加工することで、高速・自動化を目指せると説得。
 ドイツではなぜそれが必要なのか、「理屈を通せばわかってくれる」と言う。
 この要求は通り、ユング初の丸物向けで割り出し装置を付けた専用機は同社に納入された。同機を使用することで、一部の工程時間は1/4になったという。さらにその後、この仕様は世界的に標準機に採用されるようになった。
 厳しい審美眼に耐えた機械たち、その周辺に残された20%程の人手による工程は、密度が濃い。
 「職人が操作して精度を出す機械、手作業で磨く作業などは誤魔化しのテクニック。たとえば、取りしろ1μmを残した焼入れ鋼を1μm取れる加工機の前に置くことが現場作業者の技能」だという。
 ある欧州の治具研削盤を導入するに当たって、その研削盤の性能を活かせる処理をしているかどうかを、そのメーカーの役員が工場を視察に来た。
 同社のラインナップを見て、「ここまでできる設備を前後工程にそろえているなら大丈夫」と太鼓判を得た。
 国内のある部品メーカーは、同じ設備を見て、「こんなに高価な設備を備えた工場に発注するとコストがかかってしまう」と同社を協力工場にはしなかったという。
 毎年、納期、精度を追求するために利益や貯蓄よりも、設備投資を重視する。
 「機械を買ったから何が変わる、というわけではないが、日々当たり前のように品質管理を徹底する。安く作って高く売るのではなく、良いものを作る責任がある」と望月氏は語る。「それとこの仕事が趣味」とも。
写真:同社仕様のユング専用機はその後標準仕様となる